2008年度:第1回研究会「使えるアイデアの作り方」

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第1回研究会は、マンガ家・小説家のすがやみつる/菅谷充さんを講師としてお迎えし、「つかえるアイデアのつくりかた」というテーマで講義をお願いしました。

講師:菅谷充/すがやみつる(小説家・マンガ家)
日時:2008年5月8日(金)18:00〜20:30
場所:明治大学リバティータワー9階 1098教室
参加:菅谷(講師)、江下(担当教員)、学生(江下ゼミ17名)

1 アイデア全般について
・マンガはそれ自体がアイデアの塊なので、それをどこから集めて結実させるかが問題になる。
・自分がマンガ家として活動するにあたり、一発当てるのではなく、コンスタントに売れるものをつくりたいと考え、企画屋になろうと思い至った。
・アイデアを生み出すのは好奇心であり、ある種の尻の軽さだ。失敗することは怖いことでも恥ずかしいことでもない。
・失敗するのがあたりまえと思えば気が楽になる。石橋は叩く前に渡ること。
・日本ではアイデアが軽くみられていた。ファンタジーやSF、ミステリーなどの小説はアイデア勝負だが、アイデアが軽視されていたので直木賞を取れなかった。
・直木賞審査員でSFやミステリーを評価していた司馬遼太郎は、アイデアは発想力がないと生み出せないことを熟知していた。
・アニメやゲームの輸出力がついたおかげで、日本でもようやくアイデアの重要性が認められつつある。

2 アイデアに必要なスキルや姿勢
・アイデアをつくるには情報を集めるしかない。無からは有は生まれない。
・名案も思い浮かんだだけでは「思いつき」にすぎない。それを作品や商品に結実させてこそ、アイデアと呼べるものになる。
・「ネームができない」と嘆くマンガ家は多いが、ネタ(情報)のあるところにしか神は降臨しない。
・アイデアは異質な情報の組み合わせ。大ロングセラーのJ.W.ヤング『アイデアのつくり方』に書いてあることに尽きる。
・アイデアの組み替えは、紙の上ではなく頭のなかでおこなわれる。自分で絶えず考えていることは、かならず頭のなかに残っているはず。
・アイデアをひねり出すには強いモチベーションが必要だが、締切があることや、自分の好きなことは、それ自体がモチベーションとなる。

3 アイデアづくりの実践
・映画の「ショッカー技法」をマンガにもそのまま応用、それがそのままテレビでも使われた。
・仮面ライダーではオリジナルの怪人でストーリーをつくった。オリジナリティで勝負したことが、独立へのステップになった。
・初のオリジナル作品では、高所恐怖症の鳶職人という逆転の発想を用いた。その売り込みは積極的におこなった。
・ギャグづくりに苦労したときは寄席に通った。落語自体はマンガにはならないが、(笑)のパターンと落語家の臨機応変さが大いに参考になった。
・落語家の姿勢から「了見」を学んだ。了見とは生き様であり、落語家はどんな客に遭遇しても大丈夫なように普段からネタを仕込む。普段から仕込んでおかないと、いざというときには使えない。
・新聞書評欄からコンピュータ入門書がベストセラーになっていることを知り、すぐに企画書を書く。思い込んだらすぐに企画書というアクションにつなげた。
・日頃から日経各紙を購読していたら、「日経を読んでいるマンガ家」ということで打診が入った。担当編集者と話しているときに、先鋒の探りにも即答できたため、描き手に採用されることとなった。
・たまたま知り合った人を通じてQCサークルを知る。すぐに書店で調べたらQC入門書が多数あることを知り、マンガになると確信した。資料読みや取材を通して企画書を書き、縁のある出版社に持ち込んだが相手にされなかった。しかし、そこであきらめず、別ルートのつてでビジネス書の出版社に持ち込んだところ、即座に採用された。

4 アイデアづくりの教訓
・新聞や雑誌を読むのはあたりまえ。好奇心からモチベーションを維持する。外出は、なるべく電車やバスを利用する。でないと、外から情報が入らない。
・考える前にアクションを起こす。資料収集や取材などで動けば見えてくるものがある。書店・古書店・図書館は情報の宝庫だ。
・困ったときはデータベースや電子辞書を駆使してみる。
・思いついたらとにかくメモする。
・絶えず考え続ける。同時に複数のアイデアを考える。
・誰かにアイデアを話してみる。絶えずアウトプットすることがチェックになる。
・パクられても気にしない。パクられるというのは、それだけ名アイデアを出せた証拠と割り切ってしまう。
・アイデアは出せば出すほど製造能力が高くなる。
・アイデアは紙に書く。できれば規格統一したノートにまとめる。Moleskineという手帳を使っているが、これだとノートをおなじ高さに並べられるので便利。