2020年度:問題分析ゼミ[13]

2020年度問題分析ゼミ第13回の議事録です。

日時:2020年9月29日(火)15:20-18:30
会場:zoom
参加者:15名
江下、矢野G(5名)、三ツ松G(6名)、佐藤G(5名)、安藤G(6名)
欠席者:8名
遅刻者:2名
早退者 : 1名

1 連絡事項
・学祭期間明けから3回程度対面での授業を行う。
・Zoomのブレイクアウトルーム活用のため、矢野Gは1、三ツ松Gは2、佐藤Gは3、安藤Gは4と名前の後ろにつけること。
・ミロの活用を検討している。使うためにはGoogleがFacebookのアカウントが必要。
・輪読後のリサーチ演習は3本を考えている。テーマは先生が決め、主に資料調査がメイン。官公庁の資料を活用すると良い。

2 グループ発表
(1) 矢野グループ
・発表者:澤、矢野
・課題本:『テレビが映した平成という時代』
・発表範囲:第1章(ドラマ/アニメ)

[概要]
1970年からフジテレビは若手脚本家を起用したトレンディードラマを誕生させた。その後1980年代やバブル崩壊後などに合わせてドラマの傾向を変えてきたのが特徴である。つまりフジテレビのドラマは方針決定の軽快さゆえ時代と共振できるものが多い。平成後半になってくると新しい家族像・多様な人生を描いた作品が誕生するようになった。女性のあり方を見つめ直すテーマは代表的な例である。社会的信用が崩れ去り低迷が続いていたTBSだが、『JIN-仁-』をきっかけに復活を遂げる。設定は奇抜ながらも強いメッセージが好評を博し、質と企画にこだわる「ドラマのTBS」の底力を発揮したといえる。民放地上波の視聴率至上主義にともなう捏造などの問題が顕著化した頃、有料BS放送WOWOWによる「ドラマW」が開始された。これは視聴率ではなく加入視聴者をメインターゲットにした枠である。そのためスポンサー制約がなく、新たな発想と自由なテーマで番組制作が可能になった。民放キー局で最後発のテレビ東京はアニメを中心とした放送戦略を行った。ゲーム、映画化などアニメの二次利用、また海外にまでアニメが普及したことにより放送権を持つテレビ東京の利益が拡大した。
<質疑応答>
質問1:TBSビデオ問題の内容は具体的に何か。
回答1:オウム真理教事件の坂本事件の中で、TBSが坂本弁護士に否定的なことを証言したビデオを見せたという疑惑が浮上した。もし事実であれば3人もの命に関わる重要な不祥事であり、報道の基盤をゆるがす重大な問題だと認識されていた。
<補足>
・テレビ東京とアニメの関係について。
テレビ東京は民放の中で一番マイナーであり、日本経済新聞系列のテレビ局である。日本経済新聞は経済新聞なので民放キー局では最後発でもあった。何を放送しても視聴率がもともと低いため、逆に内容の冒険が可能だった可能性がある。これは小学館と少女漫画24年組作家の関係に類似している。
・TBSのドラマにおける真理性について。
もともとTBSはホームドラマに強かった。だがトレンディドラマの流行が起こった。トレンディドラマとホームドラマの違いとして、前者は「家族」がほぼ出てこない。都会の中における同年代の友人関係を描く物語が多い。つまり「家族」で何かするという内容自体時代遅れになり、ホームドラマの需要が減った。最近のドラマの傾向として「独身アラサー女子ドラマ」をテーマに掲げたものが多い。主人公は適齢期少し手前の年齢で、これは人生の中でライフコースの選択を迫られる時期である。トレンディドラマより「家族」が描かれており、家族の位置づけが肯定的になりつつあるのも特徴である。

(2) 三ツ松グループ
・発表者:岩元
・課題本:『平凡』の時代
・発表範囲:第1章

[概要]
雑誌『平凡』は日本にテレビが普及する前の大衆雑誌であった。つまりテレビ普及以前の映画やラジオと結びついたマス・マガジンだったのである。高度経済成長期以前の1950年代の日本において『平凡』は働く若者の文化の台頭として大きな役割を果たしていた。
<補足>
『平凡』がヒットしていたのは1950年代がメインであり、この頃は若者の進学率が一番のポイントである。高校進学率は80%未満であり、中卒で働く人が一定数いた。高卒の社会人も多数だった。当時の正規雇用の年間労働時間の平均は2400〜2600時間であり、現在の約1.5倍である。このような環境下で『平凡』を読んでいたため今の雑誌の読み方とはかなり異なっていた。労働のすき間で読んでいたのである。

(3) 安藤グループ
・発表者:安藤
・課題本:『趣味とジェンダー <手づくり>と<自作>の近代』
・発表範囲:序章、第1章

[概要]
当時の少女らの母世代の手芸を「ブルジョア文化」と位置づけたり、過去のものとして認識したりしていた。つまり手芸は女性らしさを示すものであるということへの嫌悪や批判が見て取れる。男性手芸化による少女たちへの新しい手芸の提案、少女にジュニアらしさを求めるといった動きも見られる。これらの手芸は女性ものであるという価値観を変換する動きは戦後のジェンダー秩序組み換えの動きでもあると捉えられる。

(4) 佐藤グループ
・発表者:川戸、宮下
・課題本:『総中流の始まり』
・発表範囲:第1章、第2章

[概要]
高度経済成長期の団地では近代時間感覚として「普通」という概念が成立した。「団地居住者生活実態調査」からわかることとして性別役割分業が基本となりつつあったことが見て取れる。つまり1960年代に作られた「総中流」は多様な現在につながっている。団地が多く建てられるようになると、団地内での独自のコミュニティが形成された。もともと都市生活者・集合住宅居住者同士の独自のつながりが存在しており、加えて団地は世帯間での助け合いが成立しやすい空間であった。育児に関わる世帯間のつながりは母親同士から始まる。すなわち母親を育児から解放するのは別の世帯の母親だと言える。性別役割分業は世帯内だけでなく団地内でも起こりうる問題であった。
<補足>
80年代半ばから団地を中心に新婚ママの孤立、育児放棄の事件化が顕著になった。

2 反省
ブレイクアウトセッションの時間が長すぎる。無駄な時間が多かった割に建設的な質疑応答もなかった。またパワーポイントの事前共有が遅かったが、これが各班の意見のなさにつながった原因となった可能性は多少否めない。

作成:初沢
編集:佐藤