2008年度:第3回研究会「情報の読み方」

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第3回研究会は、歌手・作家の八木啓代さんを講師としてお迎えし、「情報の読み方」というテーマで講義をお願いしました。

第3回研究会 情報の読み方

講師:八木啓代(歌手・作家・ジャーナリスト)
日時:2008年6月10日(火)18:00〜19:30
場所:明治大学リバティータワー9階 1098教室
参加:八木(講師)、江下(担当教員)、学生(江下ゼミ19名)

1 チベット問題の論評を求められたとき
・学生時代に中南米などガイドブックのないところを旅行し、自分で調べて原稿を書いた。これで情報収集の基本が身についたように思うが、世間一般のウワサが間違っていることを実感した。異なる情報に接したとき、なぜなのか、ではどうしたらいいのか、というジャーナリスティックな視点を持つようになった。
・情報を分析する者としてチベット問題の論評を求められたとき、まずはネットで情報を調べてみた。ただし、ネット情報の大半は無料だが、本当に重要なものが無料のはずはない。ネット情報の多くは、自己顕示的なもの、マニアックすぎて値をつけようにないもの、あるいはニュースとして世間に広げたいと意図するものだ。
・今回のチベット問題に関しては、発信源、とりわけ第一報がどこから来たのかをチェックしたが、Radio Free Americaの存在が浮かび上がった。この機関のことを調べてみると、アメリカ国務省がスポンサーであることがわかる。このメディアは、米国の国益に資する地域をバックアップしてきた過去があるので、今回の報道も鵜呑みにはできないと判断した。
・固定観念を植え付けられると、たとえ現地に行っても真実を見落としてしまう。
・日本人は両天秤にかけて物事を判断するという経験に乏しい。利害関係を把握し、どちらにころぶとどうなるのかを知っておく必要がある。

2 情報の「操作」
・報道されない情報を知ること、あるいはいろいろな新聞・放送をチェックするなど、調べる技術を身につける必要がある。
・今はネットの時代だが、固定観念として広げたい情報を広げることが可能だ。人は信じたいことを信じるもの。情報のプロは、それを強力にプッシュする。最初のインパクトのある情報を見せつけてしまえ的な姿勢が、湾岸戦争以降は顕著になったという印象がある。
・世の中の流れは仕組まれて変化することもある。情報とはそもそも作ろうと思えば作ることができてしまう性質を持つ。キューバに対するアメリカの態度が典型だ。
・旧ソ連崩壊後、アメリカのキューバ・バッシングが激化した。キューバを麻薬密売の大元と断じ、経済も風前の灯火という情報を流した。しかし、現実のキューバは大違いであった。
・世の中が危機に陥ったとき、自分が危険な目に遭遇したとき、情報に流されるままでは危険から脱出できない。
・人を説得するときには、極端な例を持ち出すというテクニックもある。たとえばニートについて、給食費を払わない人について、調べればいろいろな例が出てくるのに、わざと印象の悪い例を出してみることで、イメージを誘導できてしまう。

3 知りたくなかった不都合なことを知ってしまったとき
・えてして人は自分に痛くないように解釈してしまうもの。その自覚が必要。
・見ないようにしてしまうと、社会も恋愛も破綻に至ってしまう。
・日本が、あるいは自分自身が危うくなったときにどうしたらいいか? 常に自分のアンテナを立てておいて埋没しないようにすることが重要。
・優秀な司令官とは撤退のうまい人のこと。撤退することで、自分や身内が負う傷を少なくできる。旅行でもジャーナリズムでも、間違っているとわかったときにキチンと撤退できるかどうかが問われる。
・どういう位置にいて、どう見られているのか(好かれているのか否か、など)をチェックしなければいけない。たとえば日本の国力が落ちていると見られているなかで、どうふるまうべきか、と考えることが重要。

4 その他
・旅先で情報収集するコツはTPOに応じてコミュニケーションをすること。いろいろな階層の人に話を聞くことが重要で、ひとつの階層の意見を聞くだけではダメだ。
・地元の人とコミュニケーションをはかるにあたっては、なにか「芸」があると好意を持たれる。それは簡単な手品でもいいし、写真を撮ってあげるだけでも相手を喜ばせる芸になる。