2022年度:問題分析ゼミ[11]

2022年度問題分析ゼミ第11回の議事録です。

日時:2022年6月28日(火)15:20−19:20
会場:リバティータワー1141教室
参加者:22名 
江下、髙橋、村川G(5名)、三浦G(5名)、米田G(5名)、山岡G(5名)
欠席者:0名
遅刻者:1名

1 グループ発表
(1) 米田グループ
・発表者:劉
・課題本: 「ポスト・モバイル社会 セカンドオフラインの時代へ」(富田英典、2016)
・発表範囲: 第3章 ワークプレイス,ワークスタイルの再編、第4章 医療分野におけるセカンドオフラインの展望、第5章 モバイルメディアと学校教育
[概要]
第3章
20世紀半以降、オフィスのデザインの変容に従い、日本の社会経済の不況により、ノマドブームが生じた。モバイルメディアとしてソーシャルメディアは「重ねるメディア」として、ワークプレイスを新たに再構成している。
第4章 
医療分野においてICTは外科手術、救急現場、急患対応などの場面で有効活用がされている。情報の可視化による医療品質向上がなされている。例えば佐賀県で2011年に行われた県内すべての救急車にタブレット端末を配備し、救急車と病院の情報共有を素早く行えるようにしたというものが例として存在する。しかし医療分野においてICTとモバイル機械やスマートデバイスから蓄積された情報の活用はまだまだである。
第5章
モバイル端末の普及率の上昇からそれが学校教育や学力観に影響して、新たな教育方法が生まれた。例えば授業にARを導入したり、またはあらかじめ授業前に予習して授業を受けるという反転授業により、新たな学習形態が生まれている。しかし課題は存在する。例えばそれらをツールとして使うのではなく、どの使いこなしていくかというものがある。また教室というオフラインを超えて作用する学びをどうクリエイトし、デザインしていくかというこれからの課題も同時に存在する。
〈質疑応答〉
質問1:教育のモバイル化に筆者は肯定的なのか、それとも負の面を考慮すべきなのか。筆者の意見を聞きたい
回答:全体的に肯定的である。むしろどのようにモバイルを使って教育を発展すべきかにフォーカスしている。セカンドオフラインをうまく活用して、他国に遅れを取るべきでないという意見である。
補足:教育に対してグラフィック的なものは絶対的に効果的であるという通念性がある。しかし教授法が国によって違う(アメリカは初等教育においてドリルをとにかくやらせる)から比較することが難しい。イタリアのモンテッソーリ法は指を使うという行為を重視する。
(2) 山岡グループ
・発表者: 田島
・課題本: 『ケータイの2000年代 成熟するモバイル社会』(松田美佐・土橋臣吾・辻泉、2014)
・発表範囲: 第3章 デジタル・デバイドの現在、第4章 SNSは「私」を変えるか

[概要]
第3章 
年収、学歴、人種によってパソコン所有率や、インターネット接続率に大きな格差があるというデジタルデバイドは拡大している。またパソコンでのメール利用には市民的参与が認められたのにケータイでの市民的参与の結びつきは認められなかった。2001年において、デジタルデバイドに取り残されたのは5割だが、2011年には3割に減少。しかし年齢と世帯年収によるデバイドは拡大した。ネット利用、社会経済的地位、政治駅関与の3工程で拡大していく。
第4章 
情報通信技術の発展は人々のコミュニケーションの在り方に変化をもたらした。近代化以降、複雑化していた人間関係によって自己が多元化していく流れを、このような変化が加速させていると考えられる。自己の多元化についてはこれまで消費社会論、情報化社会論、液状化する近代論で論じられてきた。しかしSNS利用のモバイルコミュニケーションによってまた新しい自己の捉え方が生じた。
〈質疑応答〉
質問1:パソコンでのメール利用には市民的参与は認められて、ケータイでの参与は認められたのはケータイのどのような特徴が原因?
回答:パソコンとケータイの違いは第8章で論じられるので、まだ答えることができない。質問2:デジタルデバイドの定義は?一貫性がないように感じた。
回答:パソコン持ってないなどの差←データない 第二のデジタルデバイドは主体的政治的参与に関する格差 つまりこれは別物で同質的に捉えるべきでない。
補足:機会格差 お金は持っていても情報がないと買えない。それは経済的な事象以外にも同じことが言える。 地域格差も同じ現象である。

(3) 三浦グループ
・発表者: ハン、澤村
・課題本: 『ケータイ社会論』(岡田朋之・松田美佐、2012)
・発表範囲: 第4章 若者とケータイ・メール文化、第5章 ケータイに映る「わたし」、第6章 ケータイと家族

[概要]
第4章 
1980年代後半から90年代から文字コミュニケーションが活発になり、ケータイメールによるコミュニケーションが急速に普及した。しかしマナーの問題も生まれた。またケータイコミュニケーションにおける人間関係は人間関係を選択的にする。しかしケータイメールには文字の文化と声の文化から2重に批判がなされている。2000年以降、サービスが多様化し、ユーザーは相手やシチュエーションによってそれを使い分けるようになった。
第5章 
マクルーハンはメディアは情報を媒介する機能を担っているだけでなく、メディア特性それ自体が人の感覚に影響を及ぼすと論じた。人間がケータイに依存するのは近代の病であるアディクションと密接な関係がある。つまり人間関係が選択的になったことで、人が主体的に選択する対象となった友人関係が個人の努力、自己責任になり、結果的にアディクションに繋がるということだ。これは現代社会の、場所と空間の分離が深く関係していると論じられていた。
第6章 
家族の役割の感情的面からケータイの普及と家族の関係性の変化を見ることで、ケータイが今の家族の維持するために必要不可欠なものであることが明らかにされる。
〈質疑応答〉
質問1:同期性と非同期性とは?
回答:メールはいつでも返せるが、コミュニケーションは選択的なもの→同期性 相手と時間差があっても選択的に見れる→非同期性
質問2:アディクション、強迫観念、性役割分業などというのは、心理学的つまり他の学問を介して論じているのか。
回答:他の学問に関わっているような論じ方ではない。
(4) 村川グループ
・発表者: 手島、川添、田中
・課題本: ネット社会と民主主義(辻大介、2021)
・発表範囲: 第3章 ニュースへの接触パターンは政治的態度とどのように関連しているか、第4章 ネットは自民党支持を固定化させるのか、第5章 だれがなぜ改憲に賛成・反対しているのか

[概要] 
第3章 
ニュースメディア環境のカスタマイズは肯定的な意見と否定的な意見が存在する。そこでニュース接触パターンを把握する必要ある。海外での先行研究では多様な情報源を通じてニュースに積極的に接触するグループと接触全般に消極的なグループが存在する点と、特定のニュース接触パターンが政治的活動への参加と有意に関連している点が共通している。一方日本でも研究は行われている。ニュース接触パターンとメディアへの信頼度、政治的態度、デモグラフィック属性の関係を分析した結果、有意に働くという例が存在した。一方、デジタルデバイドなどから発生する知識格差や民主主義デバイドの拡大が懸念される。
第4章 
自民党支持率の下げ止まりにおいて固定的な岩盤支持層が重要である。岩盤支持層は女性より男性が多く、比較的高学歴で生活に満足し、暮らし向きが良いと感じている、また経済主義のみならず、各種ナショナリズムも強いという特徴が存在する。また特定のメディアとの接触などの情報行動が、一定程度自民支持を強める。
第5章 
ネット上の排外主義的な発言、いわゆる「ネット右派」による発言は、無視できない影響力を持っていること。しかしその影響力は右派的ネットメディアを利用するあらゆる人に影響するのではない。つまり周辺国の脅威や危険を感じさせるような発言には効果があるが、親エリート的な発言には効果が見られなかった。むしろ改憲に反対する理由とまでになっている。
〈質疑応答〉
質問1:分析の具体的な対象はどういったものたちなのか
回答:この分析に使ったのはWeb調査で、他の調査との一貫性は認めていないし、自分でも疑問を抱いている。 対象についてはあまり具体的な記述はない。
質問2:ニュースの接触パターンの4種類はどれが一番傾向が高いのか。
回答:あまり全体的に比較している記述はなかった。
<全体的総括≫
・メディアの同期、非同期 送る行為が同時なのか非同時なのか 同期→電話 非同期→メール、手紙  非同期が同期だと認識される→頻度が高いと同期として捉えてしまう。既読スルーは同期なのに非同期として捉えられている。 これはメディア論でよく語られる。
・パソコンとケータイメールの違い  メディアは究極的に何かのものを媒介する。 モノが確実に介入する。 パソコン→気軽に使えない ケータイ→気軽に使える わざわざ机に向かってパソコンを使う時間がある。これは重要な差である。メディアの環境的考察は大事。テレビはその時間に強制的に縛るメディアである。特定の時間限定の特定のコミュニケーションが生まれるというテレビの強み。電話は強制的に相手を呼び出せるメディア。しかし現代では電話はハードルの問題からメッセージに代替されている。電話は当時訪問のメタファーであった。時代に即してリビングに移り、電話の位置づけは変わった。つまりよりプライベートになっていった。

2 反省
質問する人が偏っているので、もう少したくさんの質問が出るといい。

作成:田中
編集:三浦