2023年度:問題分析ゼミ[3]

2023年度問題分析ゼミ第3回の議事録です。

日時:2023年5月9日(火)15:20-19:30
会場:リバティータワー1141教室
参加者:18名
江下、許田G(4名)、阿部G(4名)、内山G(5名)、福井G(4名)
欠席者:3名
遅刻者:0名
早退者:2名

1 グループ発表
(3)内山グループ
・発表者:内山、西岡
・課題本:北野 圭介『新版 ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(2017)
・発表範囲:第4章「黄昏に輝くハリウッド」、第5章「70年代以降 生産工場からエンターテインメント・ビジネスへ」
【概要】
第4章
ハリウッドは「垂直統合」の崩壊を経てその産業体制を変えざるを得なかった。1950年代後半には、独立系映画制作会社が多く誕生し、「パッケージ型」の制作方式に変わった。時代背景などの寄せてくる様々な波に打たれながら、ハリウッドは衰退の中で革新を遂げていく。1960年代には、映画そのものの娯楽性を求めた大作映画と、斬新な作品を目指した映画に、二極化する。

第5章
七〇年代、スター作家の誕生やシステムの変化を経て、ハイ・コンセプト型の映画製作を確立したことで様々なヒット作が生まれ、ハリウッドは以前よりもはるかに大規模な都として大復活を遂げた。

【質疑応答】
質問1:第5章における「子供の怪物化」という部分の説明で「子供が悲惨な世界の象徴であると同時に希望の担保として特権化された」とあるが具体的にはどういう意味か?
回答:たとえば『キャリー』という映画においては、いじめられて抑圧されていた女の子が超能力を以て世界を滅ぼそうとして救済を得ようとしている、という例がある。
質問2:「1960年代の若者による既成価値観の打破運動」という表現があるが、何か具体的な名前は出ているか?
回答:本に記載なし。
質問3:第5章で紹介された「テレフィルム」について。映画と比較して、テレビ用のフィルムを撮影する上での内容の変化や撮影技法の変化はあったか?
回答:本に記載なし。テレビがハリウッド等映画界に及ぼした影響は広告面での変化しか書かれていない。

【演習】
Q.「商業主義映画やB級映画などの映画界における存在意義とは?」
各Gが考えた答えを提示。「多様な映画表現を守れる」「映画文化そのものを広められる」「新人を積極的に起用できる」「成功すればその資金を大規模のプロジェクトに回せる」等の回答を各Gからほとんど共通して得られた。

A.(江下先生の回答)
大衆向け作品を出す事で業界全体が潤う。また、業界が潤っていれば新人の参入が可能になる。映画等のコンテンツビジネスの最大の特徴は「ヒットを読みづらい」点にある為、業界が潤っていればヒットに繋がる「博打」を打ちやすくなる。その為、コンスタントに利益を取れるB級映画がたくさん出ていると業界全体として良い傾向にあり、悪い傾向にある時は例えば「伝統芸能」として生き残りをかける他に手段がない状態と言える。

【補足事項】
特になし。

(4)福井グループ
・発表者:福井
・課題本:ダニエル・ハーバード『ビデオランド レンタルビデオともうひとつのアメリカ映画史』(2021)
・発表範囲:第二部(ビデオストアと映画文化のローカル化)の第三章「ビデオ資本」
【概要】
ハリウッドに対するオルタナティブが生き延びている背景には、映画産業が集中する地
理的な要因が関係している。ビデオ専門店が人の少ない地方の町のサブカルチャー的なイ
ンフラの一部としてコミュニティに組みこまれ、支えられることで、町のオルタナティブ
なメディア文化が成長し商業的に活発になる。

【質疑応答】
特になし。

【演習】
Q.「どのような場所、どのような店舗デザイン、どのようなサービスならレンタルショップに行ってみる気になるか?」
阿部G:「コンビニの一角にレンタルコーナーを作る。」
許田G:「再生機器を持っていない、持ち帰らなければいけないというレンタルの欠点をなくす為に、映画館の近くにその場でビデオを見れるスペースを置く。ビデオの中身についてはマイナーであったり、その時映画館で上映されている映画の監督が手掛けた過去作品を置く等の専門性を重視する。」
内山G:「映画館の近くにショップを置く。シリーズの過去作品や同じ監督の他の作品などをラインナップに入れる。キャストの等身大パネルを置いたり、出演者や監督がたまに来て1日従業員をするなどの「オタク向け」なサービスを取り入れる。」
福井G:「空港や駅にショップを置く。旅行先の気分を感じられるような雰囲気の映画を中心に置く。従業員はフレンドリーで、店の雰囲気は明るいほうがよい。」

A.(江下先生の回答)
いずれも正解。マーケティングの観点から注目しておきたいのはわざわざ借りに行くのはマイナス要因であり、「何かのついで」という形はマイナス要素を取り消せる要素である点

【補足事項】
イギリスで貸本が始まった時は、鉄道の乗る駅で借りて降りる駅で返すというスタイルが主体であった。

(2)阿部グループ
・発表者:南
・課題本:稲田豊史「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ コンテンツ消費の現在形」(2022)
・発表範囲:第3章『失敗したくない人たち 個性の呪縛と「タイパ」至上主義』
【概要】
倍速視聴の内的要因には「共感強制力」というものがある(共感強制力とは、「仲間の和を保つためには話題に乗り、共感する必要がある」というある種の圧力の事)。若者は世間から「個性的でなければならない」という圧を受け、また同時にキャリア教育を受けてきた事で「すべてを効率化しなければならない」と思い込むようになってしまった。オタクのパブリックイメージが悪いものから良いものへと変容し、SNS上で見られるハイレベルな議論等をきっかけにオタクを名乗るハードルが上がり、作品を解釈する上でも間違いを恐れて考察サイトを読み込むようになってしまった。仲間内でのコミュニケーションのために、数あるコンテンツをバイトや学業の合間にチェックしなければならず、金銭面でも不自由なため、サブスクを用いて倍速視聴をする。

【質疑応答】
特になし。

【演習】
Q.「本当に映像作品がコミュニケーションツールになっているのか?また、若者は本当に多くのコンテンツをチェックしているのか?」
各Gの回答は「映像作品はコミュニケーションツールとしての一面も担っているかもしれないが、話題の全てではない」「共感強制力は実際には大きく働くことはない。あるかもしれない、という程度の認識」という点で一致した。

A.(江下先生の回答)
「全体的にはやや誇張が見られるのではないか。また、若者全体ではなくF1層(20~34歳の女性層)が一番当てはまるのではないか。」

【補足事項】
大学生もF1層に区分されるがあくまでその一部である。

(1)許田グループ
・発表者:鈴木
・課題本:柳下毅一郎『興行師たちの映画史』(2018)
・発表範囲:第5章 『トッドブラウニングとカーニバル映画人』
[概要]
かつて見世物業から映画が生まれ、見世物の世界から映画監督になったブラウニングは優れた役者たちと自分の色と観客の求めるものを色濃く残した映画を多く残した。その正の部分が魔人ドラキュラであり、負の部分がフリークス怪物団だったのである。史上最も呪われた映画人がブラウニングであるなら史上最低の映画監督がエド・ウッドである。カーニバル出身の彼はまともな映画の作り方を学ばずに我流で自らの趣味や苦悩を映画にした。そんなエドウッドに惹かれたフレッドオーレンレイは史上唯一映画人からカーニバル芸人への転身をしたのだ。

【質疑応答】
特になし。

【演習】
特になし。

【補足事項】
「メロドラマ」という言葉の意味を調べておいて欲しい。
「身体棄損」は映画のテーマになりやすい。日本の作品では『蛇にピアス』『ヘルタースケルター』などが挙げられる。ホラー映画というものは「人の原型が崩れる」ことへの恐怖を軸にしている事が多い。怪物化をせずともホラーとして成立しうるのが「身体棄損」であり、作家性のある人はこれをテーマにする事がある。

2 反省
個別事項の紹介が多かった事もあり、質問があまり出なかった。

作成:石上
編集:阿部