2023年度:問題分析ゼミ[4]

2023年度問題分析ゼミ第4回(第5回)の議事録です。

日時:2023年5月16日(火)15:20-18:50
会場:リバティータワー1141教室
参加者:17名
江下、許田G(3名)、阿部G(4名)、内山G(4名)、福井G(5名)
欠席者:2名
遅刻者:1名
早退者:1名

1 グループ発表
(1)福井グループ(4班)
・発表者:福井、福田
・課題本:ダニエル・ハーバード『ビデオランド レンタルビデオともうひとつのアメリ
カ映画史』(2021)
・発表範囲:第2部『ビデオストアと映画文化のローカル化』の第4章『スモールタウン・アメリカのレンタルビデオ』
【概要】
アメリカのスモールタウンのビデオストアは様々なスタイルを持っている。これは、町の文化やオーナーによる影響が強い。またスモールタウンの店員達は、映画文化やメディアビジネスとの関係に相互に影響を及ぼしている。よってビデオストアの複雑性は地理や人の流れ、ビジネスの多様性といった複数の要因より生じているのである。

【質疑応答】
特になし。

【演習】
Q.「インテリアにこだわりを感じる店とそのこだわりの詳細について考察せよ。」
許田G:ゴンチャ 「椅子をなくすことで回転率を意識し、壁などにおしゃれな加工を施し
栄えを狙った客層を狙っている。」
阿部G:俺の○○ 「立ち食いを前提とした構造で椅子をなくすことで回転率を上げる。」
内山G:スターバックスコーヒー 「ソファーなどで居心地を高めている。」
福井G:トグルホテル 「意図的に室内を二色で構成させて印象付けている。」

A.(江下先生の回答)
グループワークでは具体的な答えが浮かばなくても、共通するイメージを持たせてから考えることで答えを探していくのが定石である今回の場合こだわりなのか、集客のためのものなのかどうかがあやふやになってしまった。こういったアイデアが思い浮かばない場合はネットやチャットGTPなどを駆使し、きっかけを作るべきである。

【補足事項】
砂漠のど真ん中に人が来る仕掛けを作った事例としてラスベガスが挙げられる。ラスベガスはカジノ、ホテルなどのレジャー施設を作ったことで、観光資源を人工的に作り出し砂漠のど真ん中へ集客した。
また人の多いところを利用すると地価などのコストが大きくかかり、その分のコストを回収できるくらいの集客力が必要になる。しかし人の少ないところならコストは低いが集客が大変。よってその分店が目的で足を運ぶ人ができる魅力を作る必要がある。
以上の点から何かの施設と抱き合わせで商売することが最も簡単であり「何と合わせるといいか」、「何と合わせてはいけないか」を考えることが肝要になる。

(2)許田グループ(1班)
・発表者:許田、小田中
・課題本:柳下毅一郎『興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史』(2018)
・発表範囲:第6章『セクスプロイテーション映画の隆盛』、第7章『人種向け映画』
【概要】
第6章
人間の最も基本的な欲望であるセックスは見世物としての集客力も高かった。当時の映画人たちは、様々な工夫を凝らして映画の中で合法的に過激な映像を見せることに力を入れ、いくつかの映画が成功を収めた。

第7章第1節、第2節
観客の特定の欲望を満たそうとするエクスプロイテーション映画の、もっともわかりやすいかたちのひとつが人種向け映画である。人種向け映画とは、あるひとつの人種集団に向けて作られる娯楽映画のことである。このような映画が作られるためには、多民族国家であること、特定人種だけでも採算がとれるほどに映画が成熟した娯楽であることという二つの条件がある。したがって、人種向け映画は市場を成立させられるだけの巨大な少数民族が存在するアメリカでしか生まれなかった。

第7章第3節
米国における最大かつ最重要のマイノリティはつねに黒人である。黒人映画はアメリカ映画氏の最初期から存在した。有色人種専門劇場の多くは人種差別の激しい地域にあった。したがって差別の激しい地ほど黒人映画が広く見られていたのだ。トーキー化による設備投資や製作コストの増大にしたがって黒人の製作する映画や劇場は激減し、30年代以降はもっぱらエクスプロイテーション映画界の人間たちが黒人向け映画を仕切るようになった。

【質疑応答】
質問1:「性的な内容の間接的な表現とはモザイクのような表現なのか、それとも伝聞のような手段を用いられていたのか?」
回答:本に記載なし。

【演習】
Q.「セクスプロイテーション映画や出演俳優は一般的な映画よりも演技的な面などから下に見られることが多いが、現代にも一般的な映画の濡れ場などに出演する女優はその女優のキャリアにとって何がメリットで何がデメリットになるか。」
許田G;メリットの方が大きい「際どく、難しいシーンであるがゆえに優れた演技力の才能
などが発掘しやすいのだろうと思う。本人の意思が最優先。」
阿部G:両方ある「演技の幅が広がっていくというメリットがある一方で、呼ばれない場所
が増えてしまうのではないかというデメリットがある。」
内山G:両方ある「プラスは新たなジャンルで新しい層を掴める。マイナスはイメージダウン」
福井G:デメリットの方が多い「イメージダウンや、獲得できなくなってくる層(若年層)
が出てくると思われる。」


A.(江下先生の回答)
上記で挙げられた生徒の意見が一般的である。濡れ場女優から大女優へと登った最たる例はマリリンモンローであったがマリリンモンローも脱ぐ女優というイメージを払拭することに苦労した。ジェーンフォンダやブリジットバルトは脱いだことがマイナスのレッテルにならなかったようにマイナスになるとは限らない。ただキャリア後半に脱ぐことは落ちぶれてしまったというイメージにつながる傾向が強い。そもそも最近は脱ぐという演技の要素が特別変わったものではなくなってきている。

【補足事項】
ヌードと儲かりゃよかれ主義とは密接な関係がある。このようなニッチなジャンルでも、『ディープスロート』などのように歴史に名を残す作品もあった。そうは言ってもやはりかなり局所的なジャンルである。

(3)内山グループ(3班)
・発表者:西山
・課題本:北野圭介『新版ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(2017)
・発表範囲:第6章『世界が舞台、拡大するハリウッド映画』
【概要】
テレビやビデオデッキの普及はハリウッド映画のさらなるビジネス展開を助けていった。映画の2次利用、3次利用を始めたハリウッドは更なる資金、観客を手に入れ、ますます巨大なものになっていった。そしてハリウッドはよりグローバル化していき、様々な人種の監督の登場や手法とともにさらに成長を遂げていった。

【質疑応答】
特になし。

【演習】
Q.「レニーリーフェンシュタール、ソフィアコッポラ、蜷川実花、河瀨直美について各班調べよ。」
許田G:河瀨直美 
「東京オリンピック公式映画の総監督および大阪万博のプロデューサーを兼任している。
リアリティを追求し、ドキュメンタリーを多く取る。カンヌのカメラドール新人賞を最年少
記録で獲得。その後欧米で受ける作品を多く製作し、数多の賞を受賞している。」

阿部G:蜷川実花 
「国際的な写真家、演出家の蜷川幸雄の娘、ビビットな作風が特徴的。代表作にはヘルター
スケルターなどが挙げられる。東京オリンピック、パラリンピックの委員を務めており、ゆ
ずやAKBの演出を担当したこともある。」

内山G:レニーリーフェンシュタール 
「女優後に監督になった。倫理観の欠如、典型的なナルシスト気質であったがヒトラーに信
用され、ベルリンオリンピックの再現ドキュメンタリーを撮影した。この撮影では独創的な
カメラワークが多用され、後世の映画に影響を与えた。」

福井G:ソフィアコッポラ 
「演技があまり好評でなく、女優ではなく制作側に立つことになる。27歳で監督デビュー
し、『ロストイントランスレーション』でアカデミー賞を受賞。現在もハリウッドを代表す
る監督である。」

A.(江下先生の回答)
河瀨直美も蜷川実花も両方元写真家でカンヌに出展。また父が著名な業界人であることが共通している。日本の映画監督では世界に通用する著名なヨーロッパの国際カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大映画賞を受賞することが大きな目標になっている。
逆にアカデミー賞はそれらと比べて国際映画祭ではないため、アメリカ映画のローカル映画祭であることが大きな違いである。また『パラサイト』に代表されるように韓国映画業界はアカデミー進出を大きく見据えている。
日本映画で売り上げを上げているのは基本アニメや特撮物。物語系映画は売り上げよりも内容性を重視するため、フランス映画に近しい。逆にハリウッドは売り上げ重視的な特徴がある。
ソフィアコッポラは映画監督兼映画プロデューサーのフランシスコッポラの娘である。フランシスコッポラは「映画小僧」の中でかなり著名な人物であり、その娘は「映画小僧」のさらに次世代の人物という点で要注目。
レニーリーフェンシュタールは1930年代の人物であるが、ペルリンオリンピックの公式映画で絶賛されたことで女性映画監督として現在も1番に名前が出るほど著名な人物である。選手を下から撮ったりなど、革新的な手法を初めて使った映画監督でもある。

【補足事項】
特に無し。

(4)阿部グループ(2班)
・発表者:小林
・課題本:稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ コンテンツ消費の現在形』(2022年)
・発表範囲:第4章『好きなものを貶されたくない人たち』
【概要】
現在視聴者のわがまま化が進行している状態である。具体的には作り手の意図を無視した倍速視聴や好きなシーンのみ視聴することであり筆者はこの快適主義に拍車がかかっていると主張している。快適主義の浸透は他人視点の欠如を生み、自分と異なる意見を許容できなくしてしまう。その顕著な例が評論本の衰退である。

【質疑応答】
特に無し。

【演習】
今回は無し。

【補足事項】
例を使う時はexではなく、e.g.を使う。exは米語のみ。
早送りは型のあるラブコメなど作品を見ることが前提になる。つまり、型を予測できるか
らこそ早送りができる。では、型にハマらないような作品を鑑賞するにはどうするのだろうか。見るのか見ないのかといった疑問も考えられる。
また元から映画評論本は売れていないし映画の売り上げに影響を及ぼしていなかった。
そして作品を体系的に見る若者の増加とあるがそもそも体系的に見るということは他作品などとの比較が伴う。よって映画を常習的に見るという習慣があった頃でなければこの話は通用しないことに留意するべきである。

2 反省
前半はいつも以上に議論が活発だったが、後半の発表になるにつれて議論が減っていってしまった点。

作成:鈴木
編集:阿部