日時:2025年5月20日(火)15:20〜18:40
会場:リバティタワー1141教室
参加者:18名
欠席者:0名 遅刻者:2名 早退者:1名
1.ゼミ概要
第1回目の研究発表(後半)を実施。
伊東グループおよび鈴木グループが発表を行い、全グループの初回研究発表が完了。
後半には、前回発表した小沢グループ・呉グループも含めた全体講評を実施。
2.発表内容
■ 伊東グループ
テーマ:「訪日外国人の滞在日数と日本文化への関心」
訪日外国人の滞在日数が長いほど、日本の日常文化(サービス精神やマナー)に関心を持つのではないかという仮説を立て、YouTube動画や掲示板サイトの書き込みをもとにデータを収集・分析した。滞在期間の長短と文化的関心の深さの相関を明らかにし、訪日客の体験志向の傾向を示した。
■ 鈴木グループ
テーマ:「外国人投資家による観光事業への参入」
外国人投資家による観光開発の成功・失敗事例(ニセコ、富良野、白馬、妙高、京都、シーガイア、ハウステンボスなど)を比較・検討し、投資先として選ばれる観光地の条件を分析した。成功要因を多角的に整理した上で、将来的な外国人観光客の動向を踏まえ、糸島を新たなリゾート開発候補地として提案した。
3.グループ講評
■ 伊東グループ
良い点
「人と文化」という観点に早い段階で着目しており、導入が明確でわかりやすい。
広告代理店的なレポートとして、現在のトレンドを的確に読み取ろうとする姿勢が評価された。
一次情報を収集し、テキストマイニングという現代的手法を適切に導入している。
頻出語や特徴語に注目した分析アプローチが良く、言語データを有効に活用している。
改善点
各節で扱う対象(東京/全国)が異なり、構成上の一貫性に欠ける。
背景説明が弱く、「なぜこのトレンドが起きているのか」という文脈的補足が不足。
提言部分の言及量が少なく、深堀りが必要。
テキストマイニングの精度向上(ストップワード設定や複数パターンの比較)が今後の課題。
redditのデータを扱う際、アメリカ人視点への焦点化がより明確だと良い。
■ 鈴木グループ
良い点
ケーススタディとしての完成度が非常に高く、構成が明確。
金融機関の調査レポートのように整理され、外国人投資家という明確なターゲット設定が効果的。
各事例(ニセコ・富良野・白馬・妙高)で、具体的な投資会社名・数値を示し説得力を持たせている。
図表の活用が適切で、データと場面情報のつながりが明快。
糸島提案では成功パターンの応用として筋の通った推論を示しており、論理性が高い。
改善点
ニセコの「世界有数」などの表現に客観的データ(ランキング等)の補強が必要。
京都事例の位置づけがやや唐突で、都市型開発とリゾート投資の体系整理が求められる。
周辺地域(小樽、美瑛など)との連携可能性を考慮した分析が望ましい。
失敗事例の選定が古く、近年のインバウンド文脈に合う事例に差し替える必要あり。
成功・失敗要因の体系化が不十分で、共通構造を整理した分析モデル化が課題。
糸島提案においても、他地域との比較やリスク回避根拠の補強が求められる。
■ 呉グループ
良い点
コンサルティング提案書的な構成で全体の完成度が高く、論理展開が明快。
シンクタンク的な分析ではなく、地方自治体向けの提案書に近い実践的アプローチを採用。
冒頭で仮説を明確に提示し、聞き手の関心を引く構成。
柔軟な思考と即応性を示し、研究姿勢としても優れている。
改善点
観光メディア分析の焦点が国内向けに偏っており、インバウンド分析には不十分。
国際的メディア(例:ミシュランガイド、トーマスクック)の参照や比較を導入すべき。
SNS分析ではインバウンド向けか否かの区別が曖昧で、訪日観光客の視点が後回しになっている。
聴衆から詳細な指摘を受けやすい構成であり、分析範囲と目的の整合性を強化する必要がある。
■ 小沢グループ
良い点
全体的な完成度が高く、分析レポートとして非常に良く構成されている。
冒頭で全体の傾向を明確に示し、データに基づく論理展開が読みやすい。
データと場面情報の結びつきが的確で、どのような変化がどのような場面につながるかを的確に導出している。
為替の視点が説得力を持つ分析軸として機能しており、現実的な説明力を備えている。
中国市場の分析が合理的で、さらに中盤以降で中国以外の市場もフォローしている点が優秀。
観光庁データを適切に読み取り、図表を効果的に活用。
数値とテキストのバランスが良く、読み手への伝達力が高い。
改善点
為替の分析において、2024年特有の長期・中期・短期トレンド差に注意が必要。
→一面的な評価を避け、複数スパンでの動向を考慮すること。
宿泊施設データの補強が必要。観光庁データのみでは不十分で、平均値だけでは説明しきれない要因があるため、他の統計やフィールド情報を活用することが望ましい。
奈良県への着目根拠が弱い。なぜ奈良なのかという選定理由の必然性を明確にする必要がある。
4.全体講評
仮説・方法・結果の整理を徹底すること。
各グループのテーマを横断的に比較し、全体構造を意識する。
データの出典を明示し、再現性を確保すること。
質疑は研究を発展させるための対話として活用する。
質問を考えながら聞く姿勢が大事。聞きながら「どこを質問しようか」を意識すること。
カジュアルに質問することに慣れる。機械的でも構わないので、質問をする練習を重ねる。
作成:鈴木