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連載コラム 多面鏡:1999年7月(1)[1999年7月8日執筆]
「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之

それなりの格好

 バカンス前は、夏のソルド(バーゲン)の時期でもある。エルメスをはじめとするブランド店の前には、開店前からソルド目当ての客が列をなす。その大半はけっして日本というわけではなく、フランス人のご婦人の姿も多数見かけられる。また、この季節には買い物を目当てにバスで乗りつける中高年のドイツ人観光客も多い。日本人のブランド好きはつとに有名だが、かといってヨーロッパ人がブランドに無関心というわけではない。買い頃の値段になれば、ほしい人はいくらでもいるのだ。こうした点は日本人と大差ない。とはいえ、ヴィトンやグッチのバッグを持ち歩く学生の姿というのは、パリではめったにお目にかかれない。東京とパリの学生を比較したら、外見への投資額は東京の学生の方が多いだろう。フランスのガイドブックには、パリっ子たちは金をかけずにおしゃれを楽しむと書いてあることもあるが、これは好意的な解釈というべきだ。学生たちの姿格好は概して「ダサい」。学生に限らなくても、夏の暑い日など、かなりラフな格好をした老若男女をそこここで見かける。
 もちろん、右岸のモンテーニュ通りや左岸のシェルシュミディ通りに行けば、ブランド物を颯爽と着こなす人の密度はすこぶる高い。このあたりはTPOに応じて着こなしを変えるというよりも、金のある人は金があるなりの格好をし、金のない人はないなりの格好をするという社会的な認識が徹底しているのではないか。BCBGはそうした了解のもとでの枠組みといっていい。学生など、金のない身分の代表のようなもの、そんな学生が「ダサい」格好をしているのは当然のことなのだ。こういう発想は階級社会的な考えからくるものだが、階級なき大衆社会のニッポンでは、隣人の持つアイテムが「世間並み」の水準となってしまい、それを維持するためだけにやたらと金が出ていってしまう。その点フランス社会には、いらぬ背伸びをする必要がないという気楽さがある。


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