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フランス コミュ荷ケーション[2]
「DAIFUKU NEWS」(ダイフク広報室/発行)1995年no.148(11月30日)pp.34-35掲載
江下雅之

空港からポストまでの果てしなき道のり —ウサギとカメのような郵便事情—

「急ぎの郵便物は普通便で」
 これは在仏日本人の合い言葉……というほどおおげさなものではないにしても、ある程度長く住んでいるひとなら、たいてい感じていることだ。
 日本の郵便局にいけば、「ビジネス便(EMS)が最も安全でしかも速い」といわれるだろう。たしかに日本国内であれば事実だ。国際ビジネス便でも、おおくの国ではその通りになるはずだ。フランスの郵便局窓口でも、「EMS(Chronopostという)が最も迅速」だといっている。
 が、日本からフランス向けの国際郵便物は、普通航空便のほうが速く届くと考えた方がいい。
 これにはいくつかの理由がある。日本など外国から送られてくる航空便は、まず国際空港で通関手続きがとられる。これはどの国でもおこなわれていることなので、EMSの「遅れ」の理由にはならない。
 フランスの場合、ビジネス便の配達は一般の郵便物とは別の扱いになり、民間のクーリエ業者が配送作業をおこなっている。そして空港に郵便物が届いてから、まずはこの業者から通知が郵送(!)されてくるのだ。これで手元に届く日数が最低で一日余分にかかるわけである。
 この通知には、郵便物を預かっていること、そして配送指示を早急にすべしということが書いてある。指定の電話かファックスで何時から何時までの間に連絡せよ、というのだ。通知に気づくのが夕方の遅い時間になったら、ここで一日失ってしまう。
 まえに一度、配送指示の連絡を二日ほど滞らせたことがある。このときは、わざわざ電報で督促がはいった。
 もっともこの電報でのやりとりがおもしろかった。
 まずはフランス・テレコム(フランスにおけるNTTのようなところ)から電話がかかってきた。そして、電報が届いていると言ったあと、早口のフランス語で電報の内容が告げるのだった。そして翌日、内容を出力した文面が郵便受けに届けられていた。別の機会には、ファックスで「電報」が送られたこともあった。
 これほど入念な確認作業をおこなうのだから、皮肉ではなしに、確実性という点では申し分ないといえるだろう。
 さて、要求事項の連絡をなんとか完了させたと考えよう。残念ながら、当日配達はしてくれない。早くても翌朝ということいなる。これでまたさらに一日過ぎてしまうわけだ。
 本人手渡しが原則のビジネス便の場合、かならず誰かが受け取りに立ち会わねばならない。しかもフランスでは、ビジネス便配送作業が午前中に限られている。だから、連絡翌日の午前中に外出する用があれば、受け取りはさらに先の日ということになる。
 オフィスならともかく、一般家庭では半日拘束されるわけで、かなり面倒な手続きといっていいだろう。とくに単身で仕事や学校に行っている者は、まず平日の受け取りができないことになる。
 これが普通便なら、黙っていても郵便受けに放り込まれているわけだし、おおきな荷物なら配送通知が入れられ、あとは自分で都合のいい時間に(といっても、郵便局の営業時間中だが)取りに行くことができる。
 こういう状況なので、EMSを使ったら、郵便物の受け取りまで発送から一週間はかかると考えていい。週末がからんでしまうと、10日近くかかる場合もある。普通航空便なら5日ですむのだ。
 おなじ航空便でも、速達ならもっと早く届くのだろうか?
 東京近辺からパリ近辺に送るのであれば、メリットはないと考えていい。それどころか、速達のほうが1、2日余計に時間がかかることさえある。
 どうやらこれは、普通便と速達とで、フランス国内での取り扱い部署が異なるかららしい。実際に東京からおなじ日に送られた普通航空便と速達とで、普通便のほうが先に着いたことが何度もある。
 むろん、日本の地方都市からフランスの地方都市に送るのであれば、速達のほうが速いかもしれない。また、空港や郵便局がストをおこなった場合——昨年はマルセイユの郵便局が二ヶ月にわたってストをおこなっていた——、速達のほうが高い優先度で扱われるため、確実に速く届くことになるだろう。もっとも、ストが年中行事のフランスでも、これは例外的な状況だ。やはり急ぐなら、普通航空便を利用するに限る。
 本当に速く届けようと思ったら、DHLやFEDEXなど、アメリカの国際宅配業者を利用するのがいい。24時間サービスを利用すれば、フランス宛でも本当に24時間後に届いてしまう。このあたりの国際ネットワークは、アメリカ系企業がいちばんきっちりと整備しているようだ。


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