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多面鏡[1998年10月7日執筆]
「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之

同性カップルと「家族」という制度

 十月九日に国民議会でPacs(pacte civil de solidarite)制度が審議される。これが成立すれば、結婚、同棲とは異なる第三のカップル制度が誕生することになる。
 Pacsは結婚ほど当事者の義務が厳しくないかわりに、相続や居住に関する権利の一部が制限される。同棲(union libre)に比べれば遥かに結婚に近い。結婚との最大の相違点は、同性カップルも対象になっていることである。このことから、「仏政府、ついに同性愛を公認か?」と言う人もいるだろうが、セックスは個人の好みであって、国が関与する問題ではない。結婚とは個人間の契約であり、今回のPacsでは、カップル間にあらたな契約関係を設けることなのである。
 ではなぜこうした制度化がおこなわれるようになったのか。Pacsが同性愛カップルの権利を認めるという文脈を持つのは確かである。しかし、それ以上に家族の枠組みが変容してきた流れに注目すべきである。家族を構成する要因には、血縁関係、同居関係、扶養関係などがあり、従来は各要因がおおむね重なり合っていた。ところが結婚率の低下、離婚率の増加、未婚カップルから生まれた子どもの増加などにより、各要因が乖離するようになったのである。こうした状況で、フランス社会は同居関係を重視するようになってきた。同居関係となれば、ヘテロである必然性は薄くなる。同性カップルに「結婚」が認められるのは、必然的な流れなのだ。
 家族の枠組みが歴史的に変化してきたことは、フィリップ・アリエスなどの社会史研究者が実証している。日本も例外ではない。昨今、家族の崩壊が主張されているが、それは現在の枠組みが変化しているにすぎない。離婚率の増加などはフランスと同様だが、はたして日本でも家族イコール同居人という認識に変わっていくのであろうか。
【参考】L'Express 1-7 octobre 98


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