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連載コラム 多面鏡:1999年3月(1)[1999年3月2日執筆]
「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之

道路という公共空間

 毎週金曜の夜十時、パリ市のイタリー広場には多数のスケーターが集まる。真冬でも数百人、夏のバカンス明けには何千人もの規模になることもある。これは昨年五月に始まったPARI−ROLLERというローラーブレードおよびローラースケートの愛好家グループが主催する走行会で、深夜一時までの三時間にパリ左岸を中心とした車道を滑走する。毎週日曜午後二時にもバスティーユ広場に集合し、同じく三時間パリ市内を滑走する走行会もある。週に二回、パリ市内のあちこちの車道がスケーターたちに専有されるということだ。
 車道といえば当然ながら自動車の交通が主な用途であるが、パリ市では、それ以外にもいろいろな活動に利用されている。デモ隊の行進はもちろんのこと、夏には革命記念日のパレードがあり、ツール・ド・フランスでは自転車のロードレース会場となる。パーキング・エリアは朝は市が開かれ、春や秋にはあちこちでガラクタ市が開催される。道路が公共空間であることを再認識させてくれる。
 もちろん、日本の都市でも車道がイベントに用いられることはある。たとえばパリの姉妹都市・京都では、祇園祭や時代祭で車道が専有されるし、市民マラソンや駅伝も開催される。デモとて警察に届け出れば敢行できる。これは憲法で認められた権利だ。しかし、市民レベルでのイベントに対し、警察当局が積極的に受け入れる姿勢を示しているとは考えにくい。実際、自治体側がイベントのために道路を使用したくても、許認可権を持つ警察がなかなか承認してくれないという。パリ警察とて、無制限に道路の使用を認めているわけではないだろうが、それでもイベントは毎週開催され、警察にはローラーブレードを履いた姿で警備するチームまでもあり、PARI−ROLLERの走行会に同伴している。そもそも当局の対応は、市民側の参加意識によっても違いが出てくるだろう。その点、パリ市民には、道路も公園とおなじような公共空間であり、自分たちの活動のために使用していい場所、という意識が徹底しているのではないか。


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